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鬱々として歩く。
僕の意識は自分の内側に向かっていて、周りの状況はまるで分からないでいた。
その為、かど屋から学校の裏門までの狭い道に似つかわしくない重厚な車のエンジン音が、僕のすぐ後ろに近づいている事に気づいてなかった。
その音が僕のすぐ側を通り過ぎる。黒光りする高級そうな車が、視界の端に映った。
流石にそこで気づき、僕は驚いて立ち止まる。
すると、僕のすぐ斜め前でその車も止まった。そして助手席のドアが開いたのだ。
そこからは、高級そうな真っ黒なスーツを着て、サングラスをかけた男の人が降りてきた。
黒塗りの高級車と同じ、威圧的な雰囲気を纏った男性だ。僕は足が竦(すく)んで動けなくなった。
でも、僕に用事は無い筈だ。たまたま僕が近くにいるだけなんだ。
どっか行け、どっか行け。
ただ、そう念じる。
でもそんな願いも虚しく、僕はその男の人に首根っこを掴まれ、後部座席のドアから車の中に放り込まれてしまった。
僕は何が起こったか分からず、ジュースだけを握り締めて、ただ固まっているのだった。
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