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ずるり。
嫌な音が、細長い廊下に響く。
闇が至る所に巣喰う空間。
廊下の片側の壁に並ぶ窓から、月の明かりが微かに忍び込んでくるが、闇を照らすには至らない。
ぞろり。
湿り気を帯びた何かが、ずり落ちるような音。
ささくれ立った何かが、滑らかさの欠片もない何かが、ずり落ちるような音。
べちゅ
その何かは、きっと粘り気もあるのだろう。
すぐには落ちず、ゆっくりと滴る。
ぞるり。
何かが、剥げ落ちる。
そして、堕ちる。
ぅおおぉぉ…………。
――それは、きっと声。
空洞の奥深くから響く、残響。
それは次第に大きくなる。
ぁぁああああ、あ、あ、!!!
ごぼ、
ぼちゅ、
じゅぶり、
ごぷん、
がぁあぁぁああああ!!!!!
――――……何かが、産まれ、堕ちた。
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