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砂。
ただひたすらに砂。
足元を支配するのは塗り固められたコンクリートでは無く。ましてや、土の地面でも無く。
脚に力を込めれば自由を奪われかねないほど肌理の細やかな砂が辺り一面に広がっている。
しかしながら、もしもこの景色を《ただの砂漠》と形容しようとすれば、それは間違いであり、的外れであるという事実を突き付けられるだろう。
かつては遥か上空に聳えていたであろう角張った建造物の軒先が砂から顔を覗かせている。
かつては整備された路上を駆けていたであろう二輪車と四輪車が寂れた様子で横たわっている。
船が。
橋が。
彫刻が。
木が、電車が、飛行機が、有名アミューズメントパークのシンボルが、
かつては――
無造作に砂上に刺さった看板と思しき青いそれが、風に吹かれてパタリと倒れた。
看板には、くすんだ文字で、こう、綴られている。
《東京都》
そう。此処は、この砂にまみれた地は、中国でもなければエジプトでもない。
日本。
これがかつての経済大国の成れの果てだった。
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