逃げてる訳じゃない

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トンッ…トンッ… 廊下を歩く音の、一定のスピードが心地よい。 たまにはゆっくり歩いてみるのもいいもんだ。 俺は静かな頓所を一歩ずつ歩いていった。 「あ…」 音が止んだ。 総悟の部屋だ… 足音が聞こえてたかもしれない、と急に忍び足で立ち去ろうとする。 その時だった。 ―――ズッ 「っ………」 すすり声だ…… 泣い……てんのか…?? いやいや、総悟に限って… そうだ、鼻水をすする音かもしれない。 無理矢理鼻をかむ総悟を想像して、自分を落ち着かせる。 しかし、 ガラッ 総悟が襖を開けた。 .
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