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今日はバイトがある日だから、休みたい欲望をおし殺して、ダルさを感じながらもバイト先に行く。
宏樹君は、いた。
空元気なんだろう。
何も知らないような表情で作業をしていた。
「おはよ」
「あ、おはよう」
僕が軽く挨拶をすると、女性うけのよさそうな爽やかな笑顔で返ってきた。
男の僕からしてみても、宏樹君はかっこいいと思う。
穏やかで優しいし、物覚えだっていい。
今日は僕と宏樹君、オーナーの三人だけだった。
「そうそう、あのさ。前に話した登山の話なんだけどね……」
僕に爽やかな笑顔を向けながら話しかけてくる宏樹君は、本当に何もしらなさそうだ。
でも、身内が行方不明になったのにも関わらず、その連絡がいかないわけはないと思う。
多分。
「いい山なんだ、そこが。
特に頂上から見た田舎の景色がたまらなくいいんだ」
本当に嬉しそうに宏樹君は話している。
何がそんなに楽しいのだろう。
宏樹君には悪いけど、正直話を聞くのもダルい。
客が少ないのもあって、話ながらやったんだけど結局僕は、話を半分も聞いていなかった。
ただ、田舎にある山に行くと心が落ち着く、ということだけは頭に残っていた。
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