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バイトが終わって、帰っていた時だった。
『お母さん!!!お父さん!!!
やだ、おねがい!!!死なないで!!』
脳裏に、あの日の事故が過る。
気持ちが悪い。
心にもやもやとした霧がかかったみたいだ。
吐き気もする。
僕は裏道から帰るから、周りを見渡しても人がいない。
しばらく休もうとも思ったけどベンチどころかこの辺じゃ公園だってない。
「おい、大丈夫か?」
途端に後ろから声をかけられる。
―足音なんて、聞こえていただろうか?―
一瞬そんな事は考えるも、きっと聞こえていなかっただけだろう。
こんなに体調が悪いんだったら、誰だって人の足音なんかに気がつくわけがない…はず。
「大丈夫そうには見えないぜ?
泣いてるしさ…」
ほんの少しだけ声は上から聞こえるのからして、いくらか僕よりも背は高いんだろう。
声音的に少し慌てていた。
「大丈夫、です」
気分が悪いときに、こうやって答えるのすらもだるく感じる。
ダルくてダルくて仕方がない。
話しかけてきた男性を上目に見るも何重にもなっていて判断できない。
そう思ったとき、僕の意識は途切れた。
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