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「君、は……?」
「江恋。江戸の江に、恋愛の恋で、江恋」
別にそんなに詳しく言わなくてもいいのに。
何てことを思った。
親切なのか礼儀正しいのか、はたまた猫被りなのか。
僕にはどれか分からないし、興味もない。
「で、君は?私、こんなに丁寧に言ったんだから、ちゃんとそれなりな名前の答え方はしてくれるんでしょうねぇ?」
何だ、ただの腹黒か。
「荒山雀。荒い山で荒山、雀は普通に鳥の雀だよ」
なんて、面倒なんだろうかと思う。
こんな面倒な自己紹介の仕方をしたのは久しぶりだった。
目の前の少女を見ると満足したような笑みを浮かべていた。
「何だ、ちゃんと喋れるじゃない。
澪兄さんや澪治兄さんは嘘つきでやぁね」
嘘つき…?
何か、僕の事をこの江恋と名乗る少女に言ったのだろうか。
でも、いつ言ったのだろうか。
僕が寝ている間だろうか??
そうなのだとしたら、いつだろうか?
……なんだか、此処に来て頭を使うのが増えている気がする。
両親が死ぬ前の僕みたいだ。
あの時は、たくさん学び、たくさん考えている自分がいた。
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