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「……澪治。お客様ですよ」
俺に背を向けてレイジとか言うやつを呼んだため、どんな表情でレイジという奴を呼んだかは分からない。
ただ、なぜか悪寒が走った。
「んだよ!!?今こっちは忙しいんだよ!
追い返せばいいだろ!!?」
奥からずかずかと目付きの悪い、黒い髪の男が寄ってくる。
所詮、ソイツの忙しいも、俺の忙しさや怒りに比べれば楽なものだろう。
だから、俺は興味を示さない。
「外は雨が降っているんだそうです。
話の相手をしてあげて下さい。
あなたの大好きな、七つの大罪、憤怒の話でも」
未だに背を向けている奴の顔は、よく見えない。
だが、目付きの悪い、レイジと呼ばれた男はその言葉を聞いた途端に嬉しそうな笑みを浮かべた。
……どこか不適な笑みだった。
「じゃあ、こっちに来いよ。
雨があがるまで、話をしてやるから」
真っ直ぐに続く廊下の先を見て思う。
家は、そんなに大きい所だっただろうか、と。
そんな思考が過ったとき、背後に何か違和感を感じて振り向いた。
辺りには階段がない。
ドアが開いたような音もなかった。
すれ違ったら気づく。
それなのに
俺を家に入れた男の姿はどこにも見当たらなかった。
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