始まりの夏

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蒸し暑い真夏の夜、巧は小田原警察署で事情を聴かれていた。 心の中では警察官のいうことなど聞いてはいなかった。 「早く戻りたい…」 巧の頭の中にはその思いしかなかった。 警察官は巧の言葉を調書に書きとめながら聴取を続けた。 どれくらいかかっただろう。ようやく聴取が終わり、巧は小田原警察署の駐車場に停めておいたRG250γⅢに跨ってからイグニッションキーを回し、キックをくれた。 RG250γは一発で吼えた。 「急がないと」 巧の思いはそれだけで、小田原の街中にマシンを滑り込ませた。
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