始まりの夏

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浩二のクラッシュは実際にはかなり酷かった。 コーナーで膨らみ過ぎて対向車の右フロントと正面からぶつかっていたのだ。 巧は集まってきた峠の仲間たちにその場を任せ、椿ラインの入口にある消防署まで救急車の要請に行くことにした。 停めておいたγに火を入れ、Uターンして椿ラインを下る。 消防署までの道のりが長く感じられてもどかしい。 消防署に辿り着くと事情を説明して再びγに跨る。 パラン、パラン、パララン γの乾いたエキゾーストノートが再び周りに広がる。 巧は救急車を待たずに椿ラインを再び駆け上がる。 「頭打ってなければいいけど…」 巧は頭のなかでそう思いながら右手のアクセルを少し絞った。 やがて事故現場に到着する。 上り車線は既に渋滞していた。 「すみません。」 巧は心のなかで止まっている車1台1台に詫びながら左側の隙間をすり抜けていく。 少し左側が広くなっている場所にγを停めて小走りに事故現場へ戻る。 何人かの峠仲間が交通整理をしてくれていた。 『すみません。』 巧は交通整理してくれている峠仲間に声をかけ、頭を下げて浩二のもとへ戻った。 峠の仲間がここでも混乱を整理するように精力的に動いていてくれた。
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