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家は貧乏だ。
しかも1つ上の兄の芙美崇が大食いだったため、私・芙美歌は食べる物もあまり食べさせてもらえなかった。
このままでは虐待になってしまうということで、私は9歳の頃養子に出された。
その後、兄のことを思い出すこともなく、普通に大学を卒業し、すんなりと就職も決まった。
あれから、14年。
就職先で、偶然兄と出会わなければ…私は幸せだった。
初めは、分からなかった。
メタボか?と思うくらい、太っていた。
しかも私と同期入社で。
どうやら就職浪人したらしい。
名前を聞いて、分かった。
「芙美崇」なんて珍しい名前、なかなかないから。
「大槻芙美崇です。太っているので、良く名前の『芙美』を『冨美』の方と間違えられます。」
自己紹介で笑いをとっていた。
会社の人は、私と芙美崇の名前が共通しているのを知って、兄妹かどうか聞いてきたが、私は芙美崇が兄だと言う事を黙っていた。
芙美崇も、何も言わなかった。
というか、私の事、覚えているのだろうか。
自分のせいで私が養子に出されたことを、悪いと思っているのだろうか?
しかし、まあよくもこんなに太れたものだ。
今までの人生、悩むことなく過ごしてきたのだろうか?
何だか私は芙美崇が憎らしく思えてきた。
私は芙美崇に意地悪をしようと心に決めたのだった。
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