序章

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「やっべぇ……もう日が暮れちまってるじゃねぇか…」  吹き抜け状の通路で外を確認すると、いつの間にか空は夜闇に包まれていた。  こう暗いと迎えに来てもらうのが難しくなってしまう。  一刻も早く脱出しようと、レッドはダハーカの移動速度を最大まであげた。  その時、目の前に黒い浮遊物体が現れた。 「何だコイツ!?」  それは丸い形をしていて、赤い不気味なオーラを纏っていた。  体と思われる部分を膨らましたかと思うと、紫の膜に包まれた黒い球体を、こちらに向かって飛ばしてきた。  レッドは本能で危険を察知し、それをかわす。 「ハッ…どんなヤツだろうが、オレ様にかかりゃミソっかすだ!」  再び黒い球体を飛ばされる前に、ダハーカで掴んで床に叩きつける。  すると、あっけなく煙となって消えていった。 「……ったく、なんだったんだか…」 『脱出急いで!その船、高度が下がってる!』  ショコラから通信が入った。  どうやらこの異常な揺れは、船が落下しているかららしい。  これは本気で急がなければ命に関わる。 『お兄ちゃん、早く!』 「おう、わかって――――!?」  視界の端に何かが映った気がして、そちらに向かってみる。  なんとそこにはネコヒトの少年が倒れていた。 (子供……!?助けるか……見捨てるか……もう死んでるかもだし……)  この切羽詰まった状況での救出作業は難しい。  レッドは悩んだ。  確実に脱出するには、ヒトを抱えるより単独の方が断然良いに決まってる。  だが見つけてしまった以上、見捨てることはできない。 「あー!クソっ!!」  レッドはダハーカから飛び降り、少年に近づいて抱え上げた。 「おい!おい!!しっかりしろって!おいっ!!」  頬を叩いて呼びかけるが、反応はない。  けれど呼吸はしっかりとしていた。  生きているなら話は早い。  後の事は脱出してから考えよう。  レッドは少年を横抱きにして、立ち上がる。  それと同時に船が限界を迎え、大きく崩れ始めていった。 「――――うわああああっ!!!!」  二人がこの時出会った、その本当の意味を知るのは…………  もっとずっと後のことだった――――  To Be Continued......
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