序章

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‡序章『始まりのエマージュ』  澄みきった晴れやかな青空を、一台の黄金(こがね)色の飛行挺が風を切りながら駆けていく。  その甲板で、赤いマントと帽子が特徴的なイヌヒトの青年―――レッドが、ラジオをかけながら、吹き抜ける風を全身で感じていた。  ジジ、とノイズ音がし、ラジオが一つの電波を拾う。 『………次のニュースです。今日未明、シェパルド共和国の西部で地震がありました。なお、環境部の発表によりますと、今回の地震は一連の同時多発地震との関連性がある可能性が高く――………」  そういえば、とレッドはラジオのニュースにふと耳を傾ける。  ここ、シェパルド共和国では、最近原因不明の地震が多発していた。  あまり揺れが気にならないものから被害が出るものまで様々だが、いずれも短期間に連続的に起きている。  普段空にいることが多いレッドだが、さすがに頻繁に入ってくる地震のニュースは気になってくる。  そう考えてると、船内で操縦してる義妹のショコラから無線が入った。 『お兄ちゃん、そろそろターゲットの船に近づきそうだよー!』 「貨物船に潜入して「書類探し」か……。報酬は期待していいんだろうな?」  今回の依頼内容を確認し、呟くレッド。  彼はハンターだ。  今まで様々な任務をこなし、数々の危険も乗り越えてきた。  今日は知り合いの情報屋からとある船への潜入を依頼されたのだ。  依頼内容の難易度が高い程、報酬も上がる。  そして今回の任務もまた、それなりに難易度が高い。 『ちゃんと成功したら、でしょ?』 「ヘッ、誰に向かって言ってんだ?」  ラジオの電源を切り、レッドが不敵に笑う。 「オレ様がバシッと決めてやるぜ!」  レッドは自信満々にそう言うと、相棒ダハーカに乗り込むため、甲板を後にした。 .
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