20人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
‡序章『始まりのエマージュ』
澄みきった晴れやかな青空を、一台の黄金(こがね)色の飛行挺が風を切りながら駆けていく。
その甲板で、赤いマントと帽子が特徴的なイヌヒトの青年―――レッドが、ラジオをかけながら、吹き抜ける風を全身で感じていた。
ジジ、とノイズ音がし、ラジオが一つの電波を拾う。
『………次のニュースです。今日未明、シェパルド共和国の西部で地震がありました。なお、環境部の発表によりますと、今回の地震は一連の同時多発地震との関連性がある可能性が高く――………」
そういえば、とレッドはラジオのニュースにふと耳を傾ける。
ここ、シェパルド共和国では、最近原因不明の地震が多発していた。
あまり揺れが気にならないものから被害が出るものまで様々だが、いずれも短期間に連続的に起きている。
普段空にいることが多いレッドだが、さすがに頻繁に入ってくる地震のニュースは気になってくる。
そう考えてると、船内で操縦してる義妹のショコラから無線が入った。
『お兄ちゃん、そろそろターゲットの船に近づきそうだよー!』
「貨物船に潜入して「書類探し」か……。報酬は期待していいんだろうな?」
今回の依頼内容を確認し、呟くレッド。
彼はハンターだ。
今まで様々な任務をこなし、数々の危険も乗り越えてきた。
今日は知り合いの情報屋からとある船への潜入を依頼されたのだ。
依頼内容の難易度が高い程、報酬も上がる。
そして今回の任務もまた、それなりに難易度が高い。
『ちゃんと成功したら、でしょ?』
「ヘッ、誰に向かって言ってんだ?」
ラジオの電源を切り、レッドが不敵に笑う。
「オレ様がバシッと決めてやるぜ!」
レッドは自信満々にそう言うと、相棒ダハーカに乗り込むため、甲板を後にした。
.
最初のコメントを投稿しよう!