咲き誇る淡い桃色

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卒業するのね… 桜が咲いたら一年生 なんて…最近じゃ 桜が咲いたら卒業式 咲き誇る淡い淡い…桜 高校入試も終わり放課後も時間はたっぷりある。 最後の放課後は絶対ここってきめてたの… 私は懐かしの部室へ向かう。 私の知る中で桜を見るには一番の場所。 もう、見られなくなると思うとチクリと胸が痛んだ。 テニスコートもよく見える。 ああ、何度ここでこうして彼の練習風景を眺めただろう… 「もう、見られない」 もう、テニスコートに彼の姿は無い。 引退したんだから当たり前か… 私だって引退後ここに来るのは、今日が最初で最後なのだから、彼があの場に居ないのも当然だ。 「もう、見られないのよ…」 彼の背を、姿を見られるだけで良かった。 存在を感じられるだけで… なのに、もう…それすらも叶わなくなる。 どうして… どうしてもっと早くこの想いに気付けなかったんだろう… 否、気付いていたのだ…それなのに私は… 「もう、遅いのに」 自覚したこの想いはもう、伝えることは叶わないだろう… 「好き」 言葉と共に感情が溶けた雫が頬を伝う 「好きっ…」 溢れる感情は止まらない。 「好きだよぉっ…ずっと、ずっと好きだったのにっ」 ああ、誰か…この雫を止めて お願いだから… 自覚したこの想いは目の前に広がるこの花に似ているかもしれない 咲き誇る淡い桃色… ひらひらと、ちらちらと舞い散る 「綺麗な桜だな…」 いつの間にか扉が開いていた。 「…っ!!」 扉の前にいたのは… 彼だった ~咲き誇る淡い桃色 Fin~
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