ひとり

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「佳奈衣ってなに……?」 「またしらばっくれちゃって。 あたし知ってんの。あんたたちがバトルしたこと」 バトルか。 あの日のことを、佳奈衣が真希に話していたとは予想外だった。 「なんなの、あいつ」 「なんなのって?」 「未練たらたらのくせにほかの男と付き合ってんだろ。しかもヘンな奴。理解できない」 真希は小さく息を吐き、微かに口の端を上げた。 困ったように眉が下がる。 「佳奈衣はモテるからね。向こうから寄ってくるの断りきれないのよ」 「なんだそれ。全然説得力ねえよ。 そんな気が弱い女じゃないの、もう充分わかってるし。騙されてんのは将太だけだろ」 すかさず切り返すと、整った顔がスッと能面になる。 目だけがギラッと俺を睨んだ。
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