ひとり

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「おまえはどっちの肩持ってんの?」 キビキビとして強い女という印象の真希。 でも、もしかしなくてもいまの状況は板挟み。 いま気づいた。 「肩持つとかないけど」 当然のような顔ですんなり答えるので、なんだか気が抜けた。 カミングアウトしたときもそうだった。 真希は常に自分の考えをしっかり持っていて、周りの存在を軽んじることがない。 将太が寄り掛かってきたのも無理はない。 そんな気がしてしまう。 ただ、真希だって同い年の女だ。 凛としたその外見からも忘れがちになるが、本当は俺と同じように中途半端な存在のはず。 外側に顕れない内面がどううねりを造っているのか、しかし知る術はないのだろう。 揺らがない女。 それが、俺から見た真希。 「あたしはね、麟」 不意に、改まったように切り出される。 挑むような視線が和らいだ。
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