ひとり

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★★★ 出口は切り開けないまま。 何度か電話を掛けようとした。 でもできなかった。 会えなくなるのがいやで。 電話で呼び出さない限り、会えないかもしれないのに。 らしくない。 こんなの全然俺らしくない。 なんて自分を奮い立たせようとしてみても、なんの解決にもならない。 俺は結局そんなもんだ。 小さくて弱い子供とおんなじ。 厚い雲にのしかかられたまま、うまく身動きができないでいる。 そうやって悶々と悩んでいても、将太がひょっこり現れるわけじゃない。 講義で会うことも、キャンパスで見かけることもない。 相変わらず、休むとなったら徹底的。 単位のことなど頭にあるはずがない。 将太はそのへん、割り切りがいいというか大胆というか。 わかってはいても、覚悟を決めるまでには相応の時間が必要だった。 ひとり残された部屋で、毎晩ループするばかりの気持ちと闘った。
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