ひとり

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切り替わった液晶を見て、途端に緊張の糸が切れる。 ……なんだよ。 どこまでも間の悪い男。 「はい」 ため息混じりに電話に出ると、受話器の向こうで微かに笑う気配がした。 『辛気臭い声』 「聴きたくないなら掛けてくんな」 おまえのせいで決意が台なし。 一気に気分が萎えた。 『ちょっとヤボ用。これからデートだしすぐ切るからさ』 ……また。 微妙に気遣うようなニュアンスで言われても困る。 おまえはそんな男じゃなかっただろ。 今日は日曜日。 いまは昼過ぎ。 将太のバイトの休憩を狙った時間帯。 俺のいっぱいいっぱいを見事に崩した張本人は、これから彼女とデートですか。 単に間が悪かっただけなのに、わざと狙われたようになんとなく理不尽さを感じる。 『彼氏は元気?』
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