ひとり

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身体じゅうが一瞬にして緊張に満たされる。 ……誰だ? 将太……? 固まっていると、再びチャイムの音。 勇のように非常識な鳴らし方ではない。 反応を確認する間をもたせながら、それでもすぐには帰らない。 「悪い、切る」 返事を待たずに通話を断つ。 ケータイをソファに投げ出して、インターホンを手に取った。 「……はい」 外の静寂が苦しい。 喉がカラカラになる。 『あの……突然ごめんなさい。 三ツ橋麟くんのお宅で間違いないですか?』 知らない女の声。 落ち着いた、大人の。 ドクン、と心臓が一際強く脈打つ。
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