燃え堕ちるもの

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向かいの席に腰掛けるまでの静けさが、胃に穴でも開けてしまいそうだった。 ……なに怖じけづいてんだ。 しっかりしろ。 なんとか自分を奮い立たせ、顔を上げる。 視線がぶつかりそうで微妙にぶつからないのは、相手が僅かに逸らしているから。 申し訳なさが顔に出ている。 ……母親似だな。 派手顔じゃないけれど、少し釣り目でクールなイメージはそっくり。 きれいなひと。 由里子より若干若そうに見える。 「あの……あの子、ここにはいないのかしら」 ドキッとして思わず目を伏せた。 申し訳なさを感じるべきなのは、間違いなく俺のほう。
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