燃え堕ちるもの

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「将太……将太さんはいません」 テーブルの下、膝の上に拳を握る。 震えたくなるのは、緊張だけじゃなく、もっとごちゃまぜな感情なのだと気づいた。 なにがなんだかわからなくて、収納しきれなくなったなにか。 決意したくせにくじかれて電話もできず、その上なぜか彼の母親と対峙してしまって、行き場をなくした想いとか。 もう、わけがわからなくて震えがくる。 必死に押さえつけた。 「いまどこにいるのかは、俺にもわかりません。お役にたてなくてすみません」 「違うのよ」 謝罪を拒むような強い声。 目を上げると、彼女は口許に微かな笑みを浮かべた。 「そうじゃないの。探しに来たわけじゃなくて。 むしろ、あの子がいないほうが都合がよかったのかも」 「……え?」
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