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「まだ勇気がないの。あの子の顔をちゃんと見てやれる自信がなくて」
言いながら、笑んだはずの口許が震えているのがわかった。
笑える状況じゃないんだ。
気持ちの整理がついてないのは、息子と同じなんだ。
ゴクリと喉が鳴る。
「あの……どうしてここに?」
乾いた声でどうにか尋ねた。
「真希ちゃんから聞いたの。将太はきっとここにいるからって」
……真希のやつ。
どういうつもりだ……?
「ほかに……なにか聞きました? 真希から」
真希が絡んでいる時点で、間違いなく腹を括らなければならなくなった。
頭がガンガンうるさい。
将太の母親は、問いを受けてスッと視線を下げた。
テーブルに置かれたまま冷えていく湯呑みに、焦点が合っているように見える。
俺も、彼女を直視できずに同じものを眺めた。
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