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「……真希ちゃんとはずっと親しくさせてもらっててね。友達をつくるのがヘタな息子だったから、あの子には随分助けられてきてると思うの」
身構える俺をかわすような話題に、逆にいやなゾワゾワ感。
彼女は湯呑みを凝視しながら続けた。
「真希ちゃんは誠実だし、あのとおり綺麗な子でしょう?
年頃になってもよく会っていたから、てっきり付き合ってるのかと勘違いしちゃってたわ」
ポツポツと話すのにやけに饒舌。
俺が相槌を打たないのを気にする様子もなく、目線は上がらないままだ。
顔は似ているけれど、無口な彼とは正反対なくらい滑らかに口が動く。
それは普段からなのか、この場限りのことなのか。
「……なんでもわかっているつもりでも、結局なにも知らないのよね。
当たり前よね。大人になるにつれて会話は減るものだし。男の子ってそういうものだと諦めてた。それがいけなかったのかしら。……こんなことになって」
なにに対してのことなのかわからなくて、どうとも応えようがない。
一般的な男女の恋愛ができないことについて?
それとも、母子がすれ違ったことについて?
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