燃え堕ちるもの

11/24
前へ
/394ページ
次へ
「え、って……違うの?」 「ち、違わないです。好きです」 本人のいない告白みたいで妙に照れる。 思わずどもった俺の顔がおかしかったのか、彼女は少しだけ笑った。 「ごめんなさいね。ほかになんて言えばいいのかわからないのよ」 笑顔のままでそう言う彼女は、きっとものすごく無理をしている。 急いで理解しようと無理をしている。 そんな気がした。 「あの」 気づいたら口を開いていた。 なにを言うかもわからないまま。 「将太を嫌わないで下さい」 切実な声が出てしまって、自分でびっくりする。 なにやってんだ俺。 俺が言えた義理じゃないのに。 「お願いです。 将太を受け止めてやって下さい」 母親の前で普通に将太って呼んじゃってるし。 ……もういいや。 なんでもいい。 ぐちゃぐちゃなままでも吐き出してしまえば、なにかは伝わるはずだ。 相手は俺よりずっと大人なんだから。
/394ページ

最初のコメントを投稿しよう!

428人が本棚に入れています
本棚に追加