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着地点の見えない瞳が、俺を見つめたまま動かなくなる。
俺も精一杯見つめ返した。
うまく言えた自信はない。
漏れ出るに任せて言葉を紡いだだけ。
「三ツ橋くんのご両親は?」
いきなり振られてドキッとした。
両親。
まだそう呼んでいいものかはわからないけれど、久々に親父と由里子の顔を同時に思い浮かべる。
「俺は失敗したほうの人間ですから」
「失敗……?」
彼女の眉間に僅かなしわが寄る。
もういらないと排除された痛みは、消えることなどない。
信じていて裏切られたのは、間違いなく俺のほうだと思う。
親からの愛は無償の愛だなんて幻想だ。
少なくとも親父は、息子に見返りを求めた。
期待に応えられなくなった俺は失敗作。
奴の世界からあっさり捨てられたんだ。
「勘当されたんです、俺」
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