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いまでこそ理解を示す由里子だって、結局は俺の「母さん」から降りた女。
夫に盾突いて息子を庇う勇気なんてない。
毎月の勘当記念日。
由里子が名付けたその呼び名からも、本気で俺を連れ戻す意志は窺えない。
ひっそり繋がろうとしたところで、どうしたって抗えない一線が引かれているのには変わりないのだ。
「……だからそんなに一生懸命なのね」
悲しげに目を伏せて、彼女はやがてそうつぶやいた。
負の表情をすると、ますます将太に似て見える。
……将太。
こんなときですら、会いたくて堪らないんだ。
「正直言うと、全部受け止める自信はないのよ」
そう言いながらも、口角が上がる。
視線は伏せられたまま、また湯呑みあたりに向かっていた。
室内の空気がこぞって俺に迫る。
生暖かいような窓からの風が、遮断されていた世界に現実を突きつける。
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