燃え堕ちるもの

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噛み締めるように何度も小さくうなずく。 親には親なりの考え方があって、それはそれで十人十色。 みんながみんな、親父のように全否定するわけじゃない。 みんながみんな、由里子のように開き直れるわけじゃない。 将太の母親は、凝り固まって捩じ曲げられないわけでも、店長のようにひどい嫌悪感を持っているわけでもない。 それが救い。 「突然押しかけてきてごめんなさい。お話できてよかったわ。 余計なお世話かも知れないけど、……仲直りしてやってちょうだいね」 当然のようにそう告げる表情は、随分と柔らかい。 目許が笑っているので、社交辞令ではないようだ。 ドクン、と心臓が跳ねた。 「……別れろって言わないんですか」
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