428人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうして?」
逆に訊かれてしまった。
不思議そうに俺を見返す視線が痛い。
「俺がいなければこんなことにはならなかったんです。それは間違いない。
あなたや将太が家に居づらくなることもなくて、苦しむこともなくて……全部俺のせいなんです」
「それは違うと思うわ」
素早く否定されて、俺は口をつぐんだ。
「ただのきっかけでしょう?
いつかわかるなら早いほうがよかったし、それは気にしないでちょうだい。
それより、将太をひとりにしたくないならあなたが傍にいてあげて。三ツ橋くん」
「……え?」
「親子の問題は親子の問題。わたしは別に息子の恋愛に口を挟みたいわけじゃないの。
矛盾してるけどね」
笑って言われても、俺は笑えない。
どう反応していいのかわからない。
「そんな困った顔しないで。
親が無理に別れさせてなんになるの? お嬢様じゃあるまいし、そこまでしないわよ。
それにね」
一旦言葉を切って、彼女は小さく息を吐いた。
そこにどんな感情が隠されているのか、知る術はない。
最初のコメントを投稿しよう!