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「……あのときの将太の顔が忘れられないのよ。傷ついた顔をして飛び出していった光景が、目に焼きついたままなの」
俺にも忘れられない光景がある。
ズキン、と胸の奥が痛みを訴えた。
「ごまかせないくらいの気持ちだったんだと思う。
そんなの、……わたしがどんなに否定してもしかたないでしょう?」
ああ。
将太が少し羨ましい。
俺の親と考え方が違い過ぎる。
哀しくなるくらいに。
「知られて怖いだけならあの子は踏み込まない。
それでも踏み込んだのは、それだけ大切にしたかったからでしょう。
母親よ? わかることだってあるのよ」
得意げな表情を造ってみせる彼女はやはり大人で、母親だった。
きっと、俺よりずっと将太をわかってる。
真希に対する悔しさとは別の感情が沸き上がる。
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