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「……大丈夫よ」
立ち上がる気配。
俺の脇にひざまずいて、彼女は遠慮がちに頭を撫でてくれた。
なんだこれ。
なんだこれ。
渦を巻く感情がうねりを上げ、涙を押し流す。
将太のことも、由里子のことも、親父のことも、なにがなんだかわからないくらいぐちゃぐちゃな気持ち。
溢れ出していく。
止められない。
「……つらかったのね」
ポツリとそれだけが聴こえた。
……そうだ。
ずっとずっと、本当はつらかったのだと思う。
ひとりで大丈夫だと意気がっても。
将太を守って抱きしめてやりたいと願っても。
本当は、これ以上ひとりになりたくない。
ひとりになって困るのは俺のほうだ。
守ってほしくて。
抱きしめてほしくて。
願わくば、将太に。
……もうダメだとわかっても、それでも。
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