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佳奈衣がなにやら声をかけ、将太がそこへ近づいていく。
暗くなり過ぎて、表情までは見えない。
会話をしているのはわかるが、なにを話しているかまでは聴こえない。
向かい合っている。
ひどい別れ方をしたふたりのはずなのに、向かい合って話している。
どちらかが取り乱している様子もない。
俺が燻っている間に、佳奈衣に奪われたのだ。
やっぱりそうとしか考えられない。
佳奈衣は真希の親友だ。
わざわざ訊き出さなくても、女なら微妙な変化を嗅ぎ分ける臭覚を持っている。
最近の俺はスキだらけだった。
あいつの割り込む場所を、苦労して用意してやったようなもの。
……なんだよ。
最後のひとことを言う権利すら、もうないのかよ。
……ここで終わるのかよ。
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