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煮えたぎる頭を抱えながら、身体だけが急速に冷えていく。
脈はドクドクと大きくリズムを刻むのに、心臓はあるべき場所から逃げてしまったかのように冷たく感じる。
もう限界。
見ていたくない。
将太は見ていたくとも、佳奈衣とのツーショットなんて堪えられない。
割り込んでいく勇気もない。
だって自信がない。
将太はもう、俺のものじゃないから。
だから強気になれない。
弱くなりすぎだ、俺。
思考を断ち切るように顔を背け、走り出す。
このまま駅に向かえば、ホームで遭遇する可能性は高いだろう。
そんなのごめんだ。
知らない土地のくせに、来た道とは逆方面に向かう。
迷ってもかまわない。
もうどうでもいい。
「麟……!!」
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