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有り得ない声が聴こえた。
振り返る勇気がない。
「麟……!
待てよ!」
揺れながら叫ばれているのがわかる。
遠くならない。
追い掛けてきている。
あの頃、何度逃げられたかしれない。
その度に追い掛けたり、諦めたり、掴まえたり、探したりした。
追い掛けられるなんて初めてかもしれない。
「麟……!」
やみくもに逃げる俺を追い続ける足音。
もう聴けなかったかもしれない声。
……無理だ。
立ち止まらないなんて無理。
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