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刺々しい。
そのくせ静かな声だった。
……別れたいわけないだろ。
こっちまでイライラしてきた。
最初の目的をすっかり見失ってしまったようだ。
こんな状況は想定外だったから。
「あいつとより戻したの?」
「あいつ?」
「しらばっくれんなよ。
佳奈衣」
返事には、僅かの空白が混じった。
「なにそれ」
「なにそれじゃねえだろ。いまだって会ってたじゃん」
背後から、わざとらしいくらい大きなため息が聴こえてくる。
「……会ったらより戻したことになるんだ?
単細胞。馬鹿にすんなよ」
いやに挑発的なのはなぜだろう。
なにをそんなに怒るのかがわからない。
第一、本来なら俺に気づいても追い掛けてこないのが将太じゃないか?
無視するのも彼の十八番。
俺を許せないなら、自分から会うことはしないはず。
俺を……許せないなら。
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