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「……なに見つけちゃってんの。こっそり逃げたのに」
「こっそり逃げんな。だったら来るな」
まるで標語のように言い切られる。
「おまえ……さっきから強気過ぎじゃね?」
「強気なわけないだろ」
「ないわけないだろ」
「うるさい」
静かな喝を受けて、俺は口をつぐんだ。
開いた口から心臓が逃げ出し兼ねないと思った。
「いまだって……怖くて震えてる。麟には見えないだろうけど」
言いながら、少し気配が近づく。
足音をたてずに距離を縮められた。
すぐ背中に彼の体温。
勘違いでも妄想でもなく、確かに感じる。
「怖いってなにが」
喉が鳴った。
「麟は別れたいの?」
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