好きだ

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「別れたいのはおまえのほうだろ。 ……愛想が尽きただろ、俺なんか」 将太からの反応が途絶える。 なにを指して言ったのかがわかったのだろう。 いやな沈黙。 静まり返った闇のなかを、コツコツ歩くハイヒールの音が微かに聴こえてくる。 近づいている。 誰かくる。 妙な緊張が走る。 あの夜とまたダブる。 あのときの目撃者も、確か女性だった。 道のど真ん中、至近距離で顔も見ずに口喧嘩する男ふたりなんて、相当おかしいと思う。 やばい。 心拍数がこれでもかというほど上昇していく。 「……麟」 不意に後ろから両手が伸びる。 遠慮がちに、ゆっくりと俺の身体を包み込んでいく。
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