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「ちょっ、将太……?」
近づく足音と、近づき過ぎた距離。
心臓が悲鳴を上げた。
「なにやってんだよ、離れろよ」
口ではそう言いつつ、振りほどく行動には出ない。
だって。
触れてくれた。
触れられたくないと言っていた将太が、自分から。
……触れてくれたんだ。
硬直したままの俺たちのすぐ脇を、ハイヒールのカツカツ音が通り過ぎる。
暗くても、まったく見えないわけじゃない。
女の視線がチラチラと向けられるのを、痛いほど感じた。
恐らくはいままでで一番、他人の視線を気にした瞬間だったと思う。
将太の両手は、きつく俺の身体を抱きしめたまま。
吐息が肩にかかる。
ドキドキする。
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