好きだ

15/23
前へ
/394ページ
次へ
心とは裏腹な、落ち着いた声が出る。 将太の身体がビクッと揺れた。 「やだ」 やだとか。 やっぱりかわいいな。 「逃げないし。大丈夫だから」 躊躇うような間のあと、彼の両手がゆるゆると解かれていく。 力なく身体に戻っていく動きに併せるように、そして俺はようやく後ろを振り返った。 「将太」 暗いなかに、彼の潤んだ瞳がキラキラと浮かび上がる。 俺をまっすぐに見つめている。 「将太……」 伸ばした手が震えるのが、自分でもわかった。 そっと髪に触れる。 「もうダメだと思ってた」 そのまま頭を引き寄せるようにして、抱きしめた。 彼の手が、呼応するように俺の背中にまわる。
/394ページ

最初のコメントを投稿しよう!

428人が本棚に入れています
本棚に追加