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心とは裏腹な、落ち着いた声が出る。
将太の身体がビクッと揺れた。
「やだ」
やだとか。
やっぱりかわいいな。
「逃げないし。大丈夫だから」
躊躇うような間のあと、彼の両手がゆるゆると解かれていく。
力なく身体に戻っていく動きに併せるように、そして俺はようやく後ろを振り返った。
「将太」
暗いなかに、彼の潤んだ瞳がキラキラと浮かび上がる。
俺をまっすぐに見つめている。
「将太……」
伸ばした手が震えるのが、自分でもわかった。
そっと髪に触れる。
「もうダメだと思ってた」
そのまま頭を引き寄せるようにして、抱きしめた。
彼の手が、呼応するように俺の背中にまわる。
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