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「僕だって同じだ」
耳許から聴こえる声。
嘘みたいだ。
彼がまた俺の腕のなかに戻ってきてくれたなんて、嘘みたいだ。
お互いの鼓動をいやというほど感じる。
実感すればするだけ、速度が増していく気がする。
徐々に重なっていく感覚。
……ああ、ダメだ。
キスしたい。
たくさん触れたい。
「……今夜は俺の部屋に来て」
話さなきゃいけないことがある。
解決しなくちゃならないことも。
でもいまは無理だ。
そんな余裕なんてない。
一瞬の間を置いて、彼の口から微かな笑いが漏れる。
返事の代わりに、その腕に力がこめられた。
痛いくらいに。
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