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か細く震えた声。
それでもはっきりと聴こえた。
「わかった。もうわかったから」
懸命に言葉を吐き出す彼が愛しい。
どうしてこんなにかわいいのだろう。
抱きしめる腕に自然と力がこもる。
抱きしめてぐちゃぐちゃにしたい。
そっと包んで大切にしたい。
抱きしめられたい。
大切にしてほしい。
相反するようでいて、実のところは全部同じなのかもしれない。
「……どうしてだろう。
おまえみたいな奴、苦手なはずなのに」
「なんだそれ。
俺だっておまえ苦手」
こんな、いつキレるかわからなくて、嘘ばっかりで、するする逃げ出すのが得意な男なんて。
苦手だよ。
……でも好きだ。
「……将太。話はまたあとで。そろそろ限界」
返事を待つ余裕もない俺の頭を、将太は笑いながらなでてくれた。
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