第二夜 「適合者」

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「ご苦労だった」 男性の声が響く……招かれた室内は、広々としており、壁一面は、本棚が並び、それらには、ギッシリと様々なジャンルの本が並んでいる。室内には、香炉があり、そこから白檀の香りが漂っている。 周囲に置かれている行灯には淡い光が宿り、室内を照らしており、中央にある黒い執務机には、書類が山積みにされ、そこに人物が居た。 書類を書く羽根ペンを止めて、此方を伺っている。 「そちらの方が〝適合者〟なのだな」 艶やかな黒髪に前髪は片目を隠す様に長く、髪の隙間から見える瞳の色は、朱色をしている。 もう片方は、闇色をしたオッドアイ。憂いをひめた表情は、気だるそうにも見えるが、どこか近寄り難く、感情が読み取りにくい若者だった。 「漁 七瀬……リストに載ってたんだぜ。狩ったら〝適合者〟俺もビックリした」 一夜は、近くにある椅子に座りながらケラケラと笑った。 そんな一夜をチラリと見た後に、淡い色の和装を纏う青年は七瀬に目線を移す。
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