第一夜 「さらば、日常」

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(泣いても生き返るわけじゃないからな。第一、人は死ぬ生き物だからなぁ) 幼少期の複雑な家庭環境からか、やや達観した性格だった故に変わり者とされたが、それでも、友は居たし、妻や子との関係も良好だった……しかし、妻子に死なれ、達観した性格に拍車がかかって今に至るのである。 (ああ、やっぱり、悲しんでいるんだな) 「なあ、アンタ」 ふと若者特有の声が聞こえ、七瀬は、思考を現実へと引き戻す。 いつの間にか、目の前に人が居たのだ。 藍色に染められた髪は、左右違う長さの髪型で、黒を基調としたパンク系のファッションに身を包んだ、高校生ぐらいの少年がいた。 怪我でもしているのか、片目には眼帯を着けている。
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