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(家族か……)
七瀬は、すでに居ない家族を思い出す。
五月みたいに家族に思いを馳せたり、面影を抱いたりしない自分は、変わっているんだなと自覚する。
「どうしたんですか?七瀬さん」
気がつけば、五月が七瀬の顔を覗き込むのが目に映り、七瀬は、何でもないよと彼に言った。
「初任務でしたからね、疲れたんでしょう……すみません、気が効かなくて」
五月は、申し訳なさそうに言った。
「構わないよ。愛子さんに挨拶も出来たしね。さ、帰ろうか。一夜くんたちが心配するだろうからね」
七瀬は、穏やかな声で言いながら、五月の肩を軽く叩く。
二人は、暫く夕焼けを眺めた後、日が沈むのを合図に現世から消えたのだった。
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