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「私たちが夫婦である限り、指輪は外さない様にしましょうね」
結婚して間もない頃に妻が言った台詞だった。
少女の様な無垢な表情をして妻は言った……自分は、今でもその約束を守っている。
「七瀬サン」
目の前に座る青年が声を掛ける……藍色に染めた髪は、アシンメトリーで、片目は医療用の眼帯で覆われ、あどけなさが残る顔立ちをしている彼は、相棒の一夜だ。
「何かな?一夜くん」
ボンヤリしていた意識を覚醒させ、七瀬は、目の前にいる一夜に笑い掛けた。
しかし、一夜は、塞がっていないつり目がちな片目に不機嫌さを露にすると、彼は、傍らに置いてある文庫本を手に取り、その角で七瀬の頭を軽く殴る。
鈍い音が、静かな休憩所に響いた。
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