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「ちょっと聞いてくれるかい?退屈だったら言ってくれれば止めるからさ」
「ああ、いいぜ」
深く考えず、一夜は了承をする。単なるなれそめや平凡な家族の話だと思っていたからだ。
「妻は、風変わりな人でね。夫婦である間は、指輪は外さない様にしようと結婚してすぐに言ったんだよ」
「へえー。だから、今も指輪してんのか?奥さんから七瀬サンの記憶が消えてもか?」
「あれ、言ってなかったかな。妻と子供は、既に死んでいないよ」
一夜の台詞に対し、七瀬は、キョトンとした表情で言った。その様子と台詞を聞き、一夜は更に驚いた表情を七瀬に向けた。
「知らねぇぞ?つか、生きてるかと思っていた…」
「誤解させたなら謝るよ」
「いや、七瀬サンは悪くねぇつーの」
七瀬の口振りから、妻子は存命かと思っていたのだ。
しかし、七瀬の態度が妙に引っかかる……自分に起きた出来事なのに他人事の様に語るからだ。
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