12章§たおやかな狂える手に

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ふと足音が聞こえてきて、視線を正面に移すレオ。 木製で出来た板張りを、踏み締めてギシギシとした音を。 だんだんと音が大きくなり、二つの人影が障子に映え、レオは身体を僅かに強張らせる。 数拍経ち、スーッと障子は開かれ、二つの影は月明かりを背に現れた。 「邪魔するぜ……おっ、起きてる起きてる」 ロウは荒っぽく言い放ち、数歩見渡しながら進むと、奥の壁にもたれているレオが視界に入り、目をぎらつかせる。 声だけでも、レオには正体が解った。 「まだ起きてないかと思いましたが、起きてましたね」 ルフシュは安堵したかのように呟くと、細い目でレオを見遣り、目の前でしゃがんだ。 「………」 一体何が起こるのか、レオは身体に力を入れてロウ達を見上げる。 「疲れたし、服も泥だらけです。風呂が沸いたので入って下さい」 「へ?」 拍子抜けの、ルフシュの台詞にレオは間抜けな反応。 「ほらっ、これに着替えろ」 ロウはポカンと口を開けているレオの目の前に、紺色に染まっている指貫を置いた。 「……………わかった」 レオは頷くと、立ち上がり指貫を拾い上げるように持つと、いそいそと出口を目指そうとするが―――…。 途中で、ロウから肩を掴まれた。
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