12章§たおやかな狂える手に

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痛さでロウは顔を歪めるも、臆する事なく話を続ける。 「そいつ、お前を逃がした後……牢に入れられてる。俺を殺したら、そいつは――」 「話はそれだけか……」 レオは面倒くさそうに呟きロウの言葉を断ち切ると、剣を首筋から離す。 首筋から血はドクドクと流れており、白い剣にも湾曲を描いている。 ―――やはり捕らえられていたか。 嫌に冷静なのは、血筋なのやら何のやら。 サリアンは、自分を逃がす時に『大丈夫』と言っていたが、無理な事ぐらい自分も承知の上だった。 知っていたのに、自由を求め―――――…俺は"逃げた"。 何故、別の方法を考えれなかったのだろう。 何故、目先の光に気を取られ、犠牲を出した。 「………風呂に入ってくる」 凛とした声でそう言うと、レオはスーッと障子を開けて穏便に閉め、怒りに身を任せるように廊下を進んだ。 「………油断しましたね、ロウ」 レオが去って数分後。 ルフシュが沈黙を破った。 「すいやせん」 ロウは恥ずかしさ半分な語調で返すと、レオに付けられた傷を手で覆う。 ズキリと痛むが、堪えられない痛さではない。 ―――下手したら死んでたな。 深く傷を当てられれば、間違いなく自分は死んでたなと改めて感じると、少し指先が震えた。
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