55人が本棚に入れています
本棚に追加
痛さでロウは顔を歪めるも、臆する事なく話を続ける。
「そいつ、お前を逃がした後……牢に入れられてる。俺を殺したら、そいつは――」
「話はそれだけか……」
レオは面倒くさそうに呟きロウの言葉を断ち切ると、剣を首筋から離す。
首筋から血はドクドクと流れており、白い剣にも湾曲を描いている。
―――やはり捕らえられていたか。
嫌に冷静なのは、血筋なのやら何のやら。
サリアンは、自分を逃がす時に『大丈夫』と言っていたが、無理な事ぐらい自分も承知の上だった。
知っていたのに、自由を求め―――――…俺は"逃げた"。
何故、別の方法を考えれなかったのだろう。
何故、目先の光に気を取られ、犠牲を出した。
「………風呂に入ってくる」
凛とした声でそう言うと、レオはスーッと障子を開けて穏便に閉め、怒りに身を任せるように廊下を進んだ。
「………油断しましたね、ロウ」
レオが去って数分後。
ルフシュが沈黙を破った。
「すいやせん」
ロウは恥ずかしさ半分な語調で返すと、レオに付けられた傷を手で覆う。
ズキリと痛むが、堪えられない痛さではない。
―――下手したら死んでたな。
深く傷を当てられれば、間違いなく自分は死んでたなと改めて感じると、少し指先が震えた。
最初のコメントを投稿しよう!