12章§たおやかな狂える手に

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∞∞∞ 「ど、どういう事ですか!? リュウラ様!!」 「ん? だから遺言だよ」 時は十六年前――前方にいる主の言葉を聴いてルフシュは瞠目したまま問い質す。 本人は苦笑しながら、サラリと返した。 「いいですか?」 リュウラは人差し指を立てて、目の前にいるロウとルフシュに向けて口を開き、話し始める。 「私がいなくなったら……子供であるファンとレオを頼みます。でも、出来るだけ妻の願いも叶えてあげて下さい……わかりましたか?」 「………。」 ロウは、リュウラと目が合うと、渋面をつくり首を静かに横に振った。 「………出来ない。なんでいなくなる?」 理由が分からず、ロウは感情的な語調でリュウラに詰め寄る。 「訪れるからですよ……」 ため息をつくと、リュウラは袂を捌きながら木の格子から見える景色を一瞥し、目を細める。 「こんな綺麗な地に私の居場所は無いのかも知れません、でもせめて――」 リュウラは二人を見ると、にっこりと微笑んで言葉を紡ぐ。 「――いなくなった後に、居心地が良い物にしていけたらなぁ~って思うんですよ」 何も言えなくなった。 主の声が震えていたから。 「…………わかりました」 ルフシュは、そう呟くと片膝をつき、口を開く。 「貴方が不在でも……約束いたします」 「お、俺もだ!! 約束する」 隣にいたロウは慌ててその場で、両膝をつきリュウラを見上げて叫ぶ。 「………えぇ、よろしくお願いしますね?」 リュウラは、目を細めて言った。
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