12章§たおやかな狂える手に

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「はい」 「わかった」 二人は、ほぼ同時に応えると瞬時に願った。 ――出来れば消えて欲しくないと――…。 だがそれは三ヶ月後には、泡のように消えてしまうのだ。 ∞∞∞ ―ゼウスタ家・寝殿― 「……やっぱり逃がしたのは、二人か」 殺気のこもった声に、ロウとルフシュの肩が震える。 怒気に揺らめく青眼で睨みつけると、ボーデンは朱色の椅子に腰を下ろした。 「誰から言われた?」 「…………。」 「…………。」 痺れを切らしたようにボーデンは、眉をヒクつかせると徐に立ち上がり、二人に迫った。 「なんでしたの?」 二人はそれでも答えない。 「そう……」 ボーデンは、部屋の隅に置いてあった幅の広いノコギリの柄を持ち、ガラガラと音を発てながら二人の元へ――――…。 「早く吐け!!!!」 ロウを睨みつけて、吐き捨てるように叫ぶボーデン。 「………出来ません」 凛とした声でロウは言うと、ボーデンは目を見開いた。 ――喋ってしまったら、ファンが……。 意思は頑なに強い。 ボーデンは怒り任せに、少し背の高いロウの胸倉を掴むとズンズンと歩き、壁に押し付けた。
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