12章§たおやかな狂える手に

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―天ノ国・テノール城― レオが連れ去られたという情報は、事件発生の数時間後に伝えられた。 森ノ国から通信機器を駆使して、事情が済んだ後に目覚めたミクナはホルスから話を聴いた通りに、しゃくり声を上げながら、女王であるアリアに伝えのだ。 ホルスとミクナは次の日、早朝に向こうを発つそうだ。 「おっ、おい!!連れ去られたって、どういう事だよ!?」 事情は瞬く間に、同胞に伝わっていった。 情報を聞き、瞠目しているバラン・ミトランビーストは思わず叫ぶ。 「『どういう事』って言われてもね……私は、分からないし」 バランの目の前に立っているのは、オロ・ガイアナ。 "嘘"をさらりと言うとオロは、部屋を見渡す。 「ビンちゃん居ないみたいだね……じゃあ、バラン伝えててね」 今の事態に不適切な表情を浮かべ、ドアノブを捻ると手をひらひらと振りながら退散するオロ。 それを、バランは冷たく見返した。 自分の左目を触る。 そこには包帯が巻かれていて、現在は隻眼だ。 「レオ……あいつ、大丈夫だろうな!!」 苛立つように叫ぶとバランは、荒々しく白いソファーに座り込み、腕を組む。 同じ同胞――同じ青い目を持つ者として、バランは考えるのだった。 ――誰に連れ去られたのかを。
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